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 このコーナーでは、かずさ地域に関連した研究機関や企業などにおける研究や技術シーズをご紹介します。第3回目は、世界的な植物メタボローム研究者の一人である千葉大学大学院薬学研究院教授の斉藤和季教授に研究内容、理化学研究所(理研)やかずさDNA研究所(DNA研)との関わり等についてお話を伺いました。
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聞き手 本日はお忙しいところありがとうございます。先生の研究や理研、かずさとの関わり等についてざっくばらんにお話を伺えればと思いますので、よろしくお願いします。はじめに先生がどんな研究をされているかお伺いします。

斉藤教授 私達の研究グループは植物の代謝機能を利用し、人の健康に役立つ植物バイオテクノロジーの研究をしています。特にゲノムの情報と植物の物質的な有用性をつなぎ合わせるというのが大筋の研究内容ということになります。大学では薬用植物を中心にやっています。理研では、植物の遺伝子の機能を決めていくためのメタボローム研究のプラットフォーム作り、それからまずシロイヌナズナをモデルとして、遺伝子の機能を応用して植物の質的な向上に資するということ、つまりいろいろな新しいものをつくるということ、また、量的な向上に資するつまり増収するということですね。それが研究目的になります。理研のほうは今年始めたばかりで、専らプラットフォーム作りを進めていますが、個々の専門研究者の目的、例えばストレス耐性とか形態形成、有用物質生産に関係した研究を内外の人たちと一緒にはじめています。千葉大と理研のグループはタイトにやっていて、抗がん性の物質を作るとか健康に資するポリフェノール類の生産とかを大学と理研で協力してやっています。

聞き手 研究の最終的な目標はどういうところにありますか。

斉藤教授 研究目標ということでは、私の個人的興味としては、植物が持っている化学的な多様性にあります。つまり植物は非常に多くの物質を作る、それは動物と違って外敵が来たり、暑い寒いといったストレスから植物は逃げ出せないから、物質的な多様性で防御するわけですね。動物は2000〜3000しか代謝物がないけれど、植物は1種でも5000とか、植物界全体では20万といわれています。そういった代謝的、化学的な多様性の基盤をゲノム的に明らかにする、つまり植物の一つ一つの代謝産物はどういったゲノム的な基盤でできているかということを明らかにするというのが私の個人的な最終目標です。それがわかれば、こういったものを作りたいという時にここをエンジニアするというのがわかる。最終的には植物のものづくりの設計図を解明するということですね。

聞き手 そういった中で、先生とかずさとの関わりはどういうところにあるでしょうか。

斉藤教授 数年前からかずさDNA研究所の客員特別研究員として、NEDOプロジェクトのメタボローム研究のプラットフォーム作りに携わっています。また、かずさバイオ共同研究開発センターのセッティングの時にも機種の選定やどういったものが必要かについてそのアウトライン作りに携わりました。それが関わり合いで、今、開発センターと共同で千葉大や理研、関わりのある企業のサンプルの解析、とくにFT-MS(フーリエ変換型質量分析計)を使った代謝プロファイリング、代謝物の構造決定や有用物質の探索をやっています。

聞き手 理研での研究とかずさでの研究の違いは何でしょう。

斉藤教授 それについては基盤的なところでは区別していません。私が理研の仕事もかずさの仕事も引き受けているのは、まず世界的なプラットフォームを作らなきゃいけない、そのためには基盤技術や基盤情報では仕分けしてはいけない。つまりプラットフォームについては基礎テクノロジー、データベース、分析手法などを共通化する。そうじゃないと世界の標準になりません。ただ、研究の出口についてはそれぞれ独自の方向性で進めていけばいいのです。だから、私も定期的にかずさに行ってミーティングしていますし、かずさの人も定期的に理研に来てミーティングしています。で、それはかずさと理研だけに限らず、慶応大学の鶴岡キャンパス(ヒトのメタボローム研究)とのトライアングルの研究プラットフォームへと発展しているところです。既に理研と慶応との共同研究の基本合意が結ばれていて、理研のブランチ(支部)が今度、鶴岡にできます。ただ、植物については理研とかずさが中心になります。

聞き手 世界的な流れの中で国内のメタボロミクスの展望やプラットフォーム作りにどういうことが必要か思われますか。

斉藤教授 まず、オミックスのサイエンスというのはゲノミクスから始まって、トランスクリプトミクス、プロテオミクスそしてメタボロミクスと来ているわけですが、ゲノムがわかればプロテオミクスまでは、全部とはいかないけれども、推定できますが、メタボロミクスは他のオミックスのようにはいかない。だからそこをつなげたい。そうすると先ほど最終目標と言ったように、植物の持つ物質生産や化学的多様性についての解明は、メタボロームをやらないといけません。それから地球的規模で見ると環境の問題とか食料の問題とか人類の生存に関わるグローバルな問題はいずれも植物に依存しています。ですから植物の物質生産機能についての研究に投資が必要だと思います。とくに日本のように資源の少ない国では植物の持つ生産能力を高度に先鋭化した技術が必要です。それと日本のメタボロミクスを世界的な日米欧の三極構造の一つにきちっとしたいという思いがあります。そのためには日本でメタボロミクスのプラットフォームを作って結集していかなくてはならない。メタボロームプラットフォームは大学の個別の研究室が持てるものではないですから…。それは複数の質量分析計やNMRなど高価で高度な技術の必要な分析機器を入れないといけないし、バイオインフォマティクスも必要です。そういう意味でオールジャパンでの体制作りが必要ですし、そうなりつつあると思います。

聞き手 植物の機能性の研究は夢があると思いますが、先生がやっておられるプラットフォーム作りが、研究や産業のツールとして利用できるのは見通しとしてどのくらい先になるでしょうか。

斉藤教授 かずさでメタボロームを始めて今年で4年目になりますが、ようやくいろいろな成果が出つつあるところです。その経験を生かして理研では2年くらいで成果が出せると思っています。しかし、機械を置いて分析システムを作る、標準品のライブラリーを作っていろいろな物質に対応できるようにするというのはある程度見通しが立つのですが、結局、難しいのはインフォマティクスのところです。この分野の人も少ないですし…。話がずれるけど県内になんとかバイオインフォマティクスの大学を作って欲しいですね。

聞き手 かずさにどんなことを期待されますか。課題や足りないことについてでも結構です。

斉藤教授 うーんと。かずさに足りないもの。交通アクセスかな(笑)。もう一つ私が感じるのはインターナショナルなサイエンスの雰囲気が足りないように思います。外国人受け入れに対して県ももっとサポートすべきじゃないでしょうか。それとかずさ地区に研究所だけでなく大学、大学院のような高等教育機関があるといいと思います。そうすれば若い人の出入りも活発になるし。また、DNA研のいいところは研究をリードする立場の人が自由にテーマを決められることだと思います。国の独立行政法人の研究機関では、5年の中期目標があるし、テーマを決めるにも個人の興味ではなくて社会的な要請が必要ですから、なかなかユニークなことがやりづらい面があると思います。

聞き手 どうもありがとうございました。
■千葉大学大学院薬学研究院遺伝子資源応用研究室のホームページ:
http://www.p.chiba-u.ac.jp/lab/idenshi/

■ (独)理化学研究所 植物科学研究センターのホームページ:
http://www.psc.riken.jp/
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